【家】は生活の基盤で、私たちの日常生活に密接に関わっているものなのに、日本人は不動産の正確な知識を持っている人が少ないです。
これは売買に限らず、賃貸においてもそうです。
不動産業界自体が利益を確保するために、あえて情報を隠していることが理由の一つとしてあげられます。
もっと早くに私に相談してくれていれば・・・と思うこともあれば、このタイミングで相談してくれて良かった!!と思うこともあります。
今回は、その相談された内容の一つを紹介します。
相談内容:
不動産の管理会社から、来月末までに退去してくれるように言われた。
理由:オーナーが物件を売却したい。
物件概要:東京都心、築35年、60平米
入居者の希望:築35年ということもあり、近隣マンションより割安の賃料だし、子どもがいて引っ越すと学区も変わるので引っ越したくない。
みなさんはどう思われますか??
相談を持ち掛けてくれ友人は、引っ越ししないといけないとなかば諦めていました。
このケースでは、上記の記載内容だけでは判断できません。追加でいくつかの項目も確認する必要があります。
賃貸借契約の種類を確認しよう
それに加えて、不動産賃貸契約には2種類あり、「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」があり、「定期借家契約」は、決められた期間までしか借りられません。つまり、自動更新は出来ません。(契約終了日になったら退去する必要があります。)再契約するかどうかは、オーナーの判断になります。なので、定期借家契約の物件の賃料は割安になります。
普通賃貸借契約
日本の不動産の賃貸借契約のほとんどが普通賃貸借契約です。基本的には、2年ごとの契約更新になっています。原則、滞納や近隣への迷惑行為など、一般的に考えて普通の生活をしていれば、入居者が更新したければ賃貸借契約を更新することが出来ます。
入居者は法律で守られている
日本では、入居者(不動産を借りている)が法的にみて立場が弱いと考えられています。日本の法律は、オーナーから入居者に立ち退きを命令することを法律が原則として認めていません。
原則と記載したのは、例外があるからです。例外とは何かといえば、例えば、マンションの老朽化で建て替えをするなど、人命にかかわるようなときのことを指します。
定期借家契約
定期借家契約というのは、1年だったり2年だったり、その期間はさまざまですが、指定されている期間は住んでもいいですよ、という賃貸契約になります。
更新に関しては、基本的にオーナー側が決めます。
入居者からみると、更新するかどうかを判断できる権利がないので、定期借家契約の物件は普通賃貸借契約の物件より割安な傾向があります。物件を探していて、「おっ、安い」と思う物件は、定期借家契約の場合が多いです。
つまり、定期借家契約の物件では契約期間終了時は、入居者さんは出ていかないといけません。もちろん、オーナーさん側から「更新OKです。」と言ってもらえれば、更新することはできますが、逆にオーナーさんが更新ダメといったら退去しないといけません。
自分に過失がないか確認しましょう
普通賃貸借だとしても、退去しないといけない場合もあります。家賃を長く滞納していたり、騒音を出して近所迷惑をかけたり。
賃貸借契約にも記載ありますが、常識的に考えて、それはダメでしょ、ということをしていたら退去しないといけないこともあります。
善管注意義務といって、賃貸だとしても自分が所有しているかのように大切に使いましょうねという規則があります。それを守らず、自分に過失があると退去しないといけないこともあるので、気を付けましょう。
なぜ退去してほしいといってきたか
オーナーさんが入居者さんに物件の退去を言い渡してくるのには、いろいろな理由が考えられます。例えば、自分の知人友人がその物件に住みたいと言い出したとか、貸し出している賃料が相場の賃料より低く、改めて高い賃料で新しい入居者を探したいとかです。
今回の相談者のケースでは、所有物件を資産整理(売却したい)から、入居者に退去してほしいということでした。
空室の物件のほうが高く売却できるから
相談者である私の友人はその理由を聞いて困惑したそうです。
不動産物件(アマート)自体は、入居者がいる状態でも売却できます。
では、なぜオーナーはわざわざ入居者に退去してほしいと言ったのでしょうか。
理由はいたってシンプルで、物件を高く売却できるからです。
売却先を居住目的の物件を探している人たちにも広げられる
アマートに入居者が住んでいた場合は、投資目的で物件購入を検討している人が売却候補にになります。
入居者がいない場合は、投資目的の場合に加えて、実際そのアパートに居住するのを目的で購入する人も売却候補になるのです。
細かい数字を書くのは控えますが、居住目的と投資目的の銀行ローンの利率は、居住目的のほうが低いんですよね。そして、圧倒的に居住目的のローンのほうが組みやすいんです。
ある程度築年数がいっているマンションやアパートの場合は、投資目的だとなかなかローンが組めない上にローン利率が高いので、アパートの価格を割安にする必要があります。
結果的に、入居者がいない空室物件のほうが、入居者がいる物件に比べて高い金額で売ることができます。
管理会社も売買のほうが手数料高くもらえるから
当然ながら、不動産のプロである管理会社もこういった事情を把握しています。
それなのに入居者に電話してきて、こう言います。
不動産の専門家が言ってくるなら、退去しないといけないのかな??そう思ってしまう人も多いと思います。
しかし、法的にみても退去しないといけない場合は、上のような伝書鳩みたいな言い方はしません。「退去してください!」とはっきり言います。
つまり、本来の意味はこうです。
単純に不動産会社は入居者に都合の悪いことは伝えていないのです。
不動産会社は物件を売買してその仲介手数料を得たいので、入居者に都合が悪いことは伏せておいて、あわよくば退去してもらって、該当物件の売買を担当したいという思惑があります。
それが理由で、退去する必要がないのに、その事実は伏せた状況で、ただ法に触れないようにオーナーが売却したいので退去してほしいと言っています、という事実だけ伝えています。
選択肢3つ:どのような対応したらいいか
これまでを読んでみると、不動産会社ってどれだけ悪徳なんだよと思うかたもいるかもしれません。
ただ、それが彼らの仕事なんだと割り切ってまずどう対応するかを決めましょう。
選択肢は大きく3つあります。自分にとって何が合うか考えてみて、それをオーナー側に伝えてみてください。
退去を断る
これは、一番簡単で手間がかからない方法です。一言質問すれば大丈夫です。
これでいけます。
新居への引越し費用の負担を打診する
例えば、たまたま引っ越そうと思ってたり、もしくは退去してほしいと言ってきたアパートにもう住みたくない場合、またどうしてもオーナーさんが退去してほしいとお願いしてきたら、この選択肢をおすすめします。
引越し費用の負担をオーナー側に打診してみてください。
だいたいどれくらい費用を打診すればいいかというのも、自分が住んでいるアパートの賃料やオーナーさんによりけりです。
私なら、、、とりあえず賃料の3か月分くらいをお願いして、そこから交渉すると思います。
物件を購入する
この選択肢をとる人はまれかもしれません。
しかし、住んでいる物件を気に入っているのであれば、賃貸契約している物件をそのまま購入するのも一つの手だと思います。
ちなみに私に相談を持ち掛けた友人は、結果的に物件を購入しました。
住んでいるマンションを気に入っている人は、購入も一つの選択肢としてオーナーさんに売却予定金額を聞いてみると良いと思います。